インタビュー
2018.11.14

【株式会社Loveable・青木想さんインタビュー】 デキる経営者に共通するマインド&お金の価値観とは?

ベンチャー企業のあらゆる経営数字を可視化させ、自走する組織を創ることを事業ミッションに掲げる株式会社Loveable。創業者である青木想さんは、株式会社リクルート(現リクルートマーケティングパートナーズ)に新卒で入社。計数管理や事業戦略立案から法務、総務業務、サイト設計など企画職を9年間経験したのち、外資保険営業を経て起業。現在はシングルマザーとして2児の子育てをしながら代表取締役として活躍されています。

キレ味鋭い頭脳と女性らしいしなやかさ、明るさを兼ね備え、ビジネスパーソンとして第一線をひた走る青木さんに、これまでのキャリアをはじめ、多くの経営者との交流を持つ青木さんならではの「目指すべき経営者の姿」、自立した女性になるためのヒントなど、幅広い観点で語っていただきました。

PLやKPIを学んだ新人時代。離婚をきっかけに営業で稼ぐことを決意


--リクルートでは、どのようなお仕事をされていたのでしょうか?

中古車情報誌『カーセンサー』の収支管理の部署に配属され、事業の損益計算書(PL)を読むところからはじまり、KPI管理など数字にまつわることから、事業戦略立案、法務、総務業務などに携わっていました。たとえば、事業のKPIがどのような指標で、それに対してどういう目標を置き、戦略を描いていくかのベースになる分析も行っていました。

……と言うとかっこよく聞こえるかもしれませんが、かなり緻密で細かい作業でしたね。当時、『カーセンサー』は全国に20版以上。版の数だけExcelシートがありました。そこに数字がずらっと並んでいて、数字のズレなどを洗い出していくのです。本当は営業志望だったのですが、新卒で経営管理に配属になったのも私だけで、心が折れそうになった日は数えきれません。ただ、どうしたら事業が伸びていくのか、トップの決断をメンバーに理解してもらうためにはどうしたらいいのかなど、経営にまつわることを多角的に学べましたね。

--そこから9年経ち、離婚を機に外資系保険会社の営業に転職されたそうですね。

当時、子どもが5歳と3歳で、私が親権を持つことになったのですが、自分が世帯主として仕事をすると決まった瞬間、働くことに対して意識が変わりました。当時の仕事で管理職になれるかどうかも分からない中で、まず不安が先行しましたね。経営企画の仕事しかしておらず、外部に人脈もなく、このまま年を重ねて居づらくなったらどうするんだろう、と。じゃあどうしようかと考えた時、どのような状況下でも稼げればいいんじゃないかと思えるようになったのです。稼ぐために私に足りないものは営業力と人脈だという結論に至り、まずは営業力を身につけようと考えました。外資系保険会社に入社したのは、リクルート出身の人がトップ営業マンとして活躍されていたのが大きな理由でした。

--新規開拓がメインだったそうですが、気持ちが折れそうになったことはありませんか?

それはなかったです。保険の営業では、1か月の研修を経てフィールドデビューします。確立された型があるので、営業初心者の私にはとても助かりました。逆に言えば、型さえ身に付ければ、結果は「行動量」に比例します。保険の営業は、まず自分の知り合いにテレアポ、そこからご紹介いただき、お客様を開拓していくのですが、見込み客を増やすためには「行動」が重要。寝る間を惜しんで、人に会い続けることができれば、自ずと結果はついてきます。なので、夜間も交流会や会食に積極的に参加、土日も休まず営業していましたね。

--仕事の手応えを感じられたのは、どれくらい経ってからですか?

入社1年ほど経った頃です。1年目の社員を対象に“初年度新人コンベンション”が開催され、全国1,378人中3位、女性営業として1位を獲得できたのです。私は保険で成功したかったので、その証となる1位という順位をいただけたことは、とても特別でした。強い思いがあったからこそ、行動量やモチベーションも下がらなかったのだろうと思います。1位になろうと思ったら、「断られたらどうしよう」なんて悩む余裕もなかったんです。そうした意味でも、新人賞の表彰は自分にも稼ぐ力があるんだ、という自信に繋がりました。

--ただ、1年9か月で退職されたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?

保険の仕事は自分にとって天職だと思っていたのですが、やはり大変でした。たとえば、日曜の21時にお客様とのアポイントで出掛けることも。それでも最初のうちは、ご契約いただけることが嬉しかったです。でも、次第に「子どもと一緒に過ごす予定だったのに、私はこれで良いのかな」という思いが脳裏をよぎるようになって……。そんな折、法人保険の開拓の中で、起業家コミュニティの代表とつながりができたのです。その方から、「リクルート時代に学んだことをもとに勉強会を開催してもらいたい」とご相談いただき、経営企画の勉強会をはじめました。

その勉強会に参加された方が「青木さんのスキルはベンチャー経営者に必要だよ」と仰ってくださり、「これは仕事になるかもしれない」という思いが湧きましたね。自分の想いを持っている経営者は名刺の重みが違うと感じていましたし、お金は稼げなかったとしても「青木想」が看板になる名刺を出せた方が、よほど誇らしいと感じたのです。2か月くらいどうしようか悩みましたが、このままでは保険に加入いただくお客様にも失礼だと思い、起業の決断にいたりました。
 

経営の成功を左右するのは経営者のマインド


--2018年2月、株式会社Loveableを起業されました。ベンチャーの経営支援と個人のマネーデザインの事業を展開されていますが、自分のやりたいことを考えた結果、2つに絞られたのでしょうか?

そうですね。ビジョンを持ってグロースしていこうとする熱い想いを持つ起業家を、経営の面でサポートしたいと思いましたし、お金を通して個人の方の人生を応援したい気持ちもありましたから、2つを両立させることは自然な流れでした。

--現在、ベンチャー企業をメインに、起業家の伴走者として経営戦略にも携わっていらっしゃいます。具体的なお仕事内容を伺えますか?

弊社では、起業家が立ち上げた会社やサービスを、さらに大きくするための仕事をしています。具体的には、数値管理やKPI指標の策定、予実管理など、経営の根幹に関わる部分を起業家と一緒に考えています。従業員が増えても、決断のスピードを落とすことなく組織を進めていくには、起業家個人の力から組織の力で会社を拡大させる戦略が必要になるんです。そのためには、数値によって見える化させ、PDCAが回せる仕組みを作り、再現性を組織に生み出すことは非常に重要になります。
ただ、ベンチャーがそのために経営企画の人材を採用するのは容易ではありません。どうしても、起業家がその役割をずっと担い続けてしまうのです。ですから、そのジレンマを解消するため、弊社のノウハウを活かしていただきたいと思っています。

--クライアントは何社ほど?

現状、十数社ですね。VCからのご紹介や、私が経営企画ネタを呟いているTwitterからのご相談も多いので、ありがたいかぎりです。クライアントの規模は、創業2年以内のアーリー・シードの会社から、上場前のミドル・レイターの企業まで本当に幅広いです。ただ共通しているのは、スタートアップが中心で、どの会社も上場を目指していること。支援の形も、コンサル業務でご契約いただくケースから、顧問として企業の中に入らせていただくケースまで、会社に合わせて柔軟に対応しています。

--インプットも大変ではないですか? 

そうですね。経営者に助言をする立場なので日々勉強です。アウトプットに偏りすぎて、インプットが減らないように気を付けています。資産と一緒で、アウトプットばかりだと、自分の能力という資産が目減りしているように感じるのです。でも結局、多様なクライアントを支援させていただくことが自分の知見に繋がるので、案件を増やすことが一番効果的なインプットになっていますね。

--青木さんから見て、業績を伸ばしている経営者に共通していることはありますか?

経営者が本当に叶えたいビジョンと、会社の方向性が一致していることに尽きます。この2つにギャップがあると、やはり組織はうまく機能しません。例えば、経営者のビジョンが不明確になったり、サービスとして目指す世界観に戸惑いがあると、その迷いは組織全体に伝播してしまいます。経営者自身が「こんな組織であってほしい」「こういう価値を提供したい」「もっとこのステージに登っていきたい」といった想いを明確にし、自ら先を描いていくことが必要だと思います。

--ベースとして、ブレないマインドが必要だということですね。

そうですね。経営者は自分自身の感覚を研ぎ澄まし、迷いをなくし、心の在り方を意識してベストなマインドを維持することが重要です。最近話題になっている「マインドフルネス」に惹かれる経営者が多いのも、マインドの重要性を実感しているからではないでしょうか。もちろん、組織のハード面として、数値管理を徹底したり、人事評価制度をしっかり作ったり、そういった仕組みの部分も重要です。でもある程度、ハード面が整った後の経営者の仕事は、判断と決断にフォーカスされます。フラットにいつも同じパフォーマンスで経営の決定をするためにも、ベストなマインドを維持していただきたいですね。

--マインドを確立するために、経営者の皆さんはどのような習慣や行動を身につけていらっしゃる印象ですか?

経営者によって全く違いますが、何かしらのルーティンを持っていらっしゃるのは共通しています。運動や食べ物、寝る時間などをコントロールされているイメージですね。1時間の質をいかに高めるかを重要視されているので、迷う時間を省くために、あえてルーティンを作っているのかもしれません。
 

成功している経営者は「価値がないものには1円も払わない」


--経営者の資産運用について、皆さんどのような価値基準をお持ちでしょうか?

まず、必ずと言っていいほど投資をしてらっしゃいます。不動産や金融商品、絵画や美術など、短期的ではなく長い目で資産価値があるかを考えていらっしゃるのでしょう。創業者ともなると最初は全然お金がないところから、財を成して資産を築いているので、皆さんすべからくお金に対する考え方はシビアで堅実です。ちなみに、その堅実さはどこで見てとれるかというと、矛盾しているようですが、金額(お金の「額」)でものを考えないところ。100万円だから高い安いではなく、価値にお金を払うという考え方をしてらっしゃいますね。ですから価値に見合わなければ1円も払いたくないし、価値があれば1,000万円でも惜しくない。あらゆるサービスに対してそうした思考をお持ちだなと感じます。

--ベンチャーの経営者は会社の資産を増やすために、自分の報酬を削られることもあるかと思うのですが、その辺りいかがでしょうか?

やはり自分のお金を削ってでも事業に投資したいと思っているので、皆さん個人の役員報酬は少なく設定されているケースが多いですね。特に上場を目指していらっしゃる場合ですと、上場することでその労がすべて報われるというモチベーションで、それまでは本当に少ない報酬でお仕事をしていらっしゃると思います。

--では、経営者が知っておくべき“お金との関わり合い”のセオリーを教えてください。

直接的なお金との関わり合いではありませんが、若手経営者でしたら、会社員を辞めて起業するときは、不動産を買っておいた方が良いです。というのも、起業家は世の中で最も信用度が低いポジション。不動産ローンの審査でも引っ掛かってしまいますし、借入できたとしても金利が高くなるのです。「上場してようやく不動産を購入できた」とおっしゃる経営者もたくさんいます。会社員という立場にあるのであれば、その間にローンを組んでおいた方がいいと思います。

--なるほど。また、お金にまつわることで「こんなことに気をつけるべき」というアドバイスはありますか?

財を成してからも、よく分からないものに投資するのは良くないですね。すごく儲かる投資はまずないので。経営が軌道に乗りはじめると、若手のベンチャー経営者には色んなお金の話が集まってきますので、気を引き締めていただきたいですね。
 

自分に素直になることで自立に紐づく価値観が見つかるはず


--最近は女性起業家も増えています。青木さんはシングルマザーとして育児中でもいらっしゃいますが、「母」と「社長」の2足のわらじを履きこなす、青木さんならではのメッセージをいただければと思います。

まず、自分の価値観を大事にしてもらいたいです。特に女性は結婚や育児などのライフイベントにおいて、世の中の価値観に縛られてしまって身動きがとれないことが多いです。
結婚適齢期に未婚だと「なんで結婚しないの?」、育児中でバリバリ働いていると「子どもがかわいそう」と指摘する人もいるでしょう。時にそういう声に傷つく場面もあるかもしれません。でも、そうした声を投げかける人が、本当に自分の人生を変えてくれるでしょうか。自分の人生の選択や決断において、どれだけ重要な意見になるのでしょうか。
もし、世の中の価値観を前に立ち止まることがあるなら、ぜひ一度、自分に問いかけてみてください。
そして「自分はどう生きたいか」の答えを見つけてほしいです。

不思議なことに、答えがでると自分が何でもできる環境にいたことに気づきます。今は自分次第で何でもチャレンジできる時代。お金をかけずに情報を集める手段もたくさんあります。特に起業を志す人にとっては、ハードルがかなり下がっているでしょう。

私自身も、今でこそ経営コンサルとして起業していますが、リクルートを辞めた当初はまさかこの仕事で起業できるなんて思ってもみませんでした。少しずつ、一歩ずつ、自分の心と向き合って、自分の価値観を探していく道の中で、今があると思っています。

--確固とした価値観を持つためのヒントを伺えますか?

自分の気持ちに素直になること。これに尽きますね。特にハイキャリアの女性は自分の感情を二の次にしがちです。男性と対等であろうとすればするほど、男性的な働き方や論理的な立ち居振る舞いであろうと、自分の感情を必要以上に隠したり否定したりしてしまうんです。

男性でも、感情的に主張したり怒ったりする人ももちろんいます。でも優秀な女性は、自分が感情的に振る舞った結果、「女性だから」とレッテルを貼られてしまうことを恐れるがあまり「ロジカルで冷静でいよう」と意識してしまう。それを繰り返していると、そもそも自分は何が好きで、何に感情が揺さぶられるのか見失ってしまいます。

何にワクワクしたか、何をしているときが楽しかったのか、素直な気持ちを大事に生きることが、価値観を形成するうえでは大切です。感情が豊かになった結果、もし会社に居づらくなるのなら、自分らしさを手に入れた証拠だとポジティブに受け止めてみてくださいね。
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