相続
2019.3.27

40年ぶりに改正された相続関連法をおさらいしてみよう

(画像=Freedomz / Shutterstock.com)
(画像=Freedomz / Shutterstock.com)
民法の相続税関連法は、1980年以来大きな改正が行われてきませんでした。しかし、少子高齢化や社会環境の変化などに対応するため、約40年ぶりに相続関連の大幅な改正が行われました。今回は、その内容を解説します。

配偶者居住権の新設(2020年4月1日施行)

今回の改定の目玉ともいえるのが、「配偶者居住権の新設」になります。例えば、預貯金4,000万円、自宅4,000万円を残して父が死亡し、法定相続人が妻(母)子供一人だった場合、母と子供の法定相続分は半分ずつの4,000万円です。この場合、母が自宅に住み続けるため所有権を取得してしまうと、預貯金の4,000万円はすべて子供が相続し、母は生活資金を一切相続できなくなります。このような状態を改善するために新設されたのが、「配偶者居住権」です。

仕組みとしては、子供が負担付き自宅所有権を取得します。この場合、負担付きですので4,000万円ではなく3,000万円と仮定しましょう。所有権は4,000万円ですが、その差の1,000万円が母と子供の間で移動します。すなわち母は、居住権1,000万円と現金3,000万円、子供は母の居住権という負担付き自宅所有権3,000万円と現金1,000万円をそれぞれ相続することとなるのです。母からすると、自宅に住み続けながら当面の生活資金である現金も相続できることになります。

遺産分割の見直し

1.自宅の生前贈与(2019年7月1日施行)
被相続人の財産の中には、相続の対象となっても相続税の対象とならないものがあります。それらを一般に「特別利益」と呼びます。特別利益の代表例は、夫から妻へ遺贈された自宅や生計を保つために渡された現金などがあります。しかし、現行法では他の相続人からすると一人だけ得することとなるので、不公平感はぬぐえません。

そのために「特別利益の持ち戻し」という制度で実際の相続時には調整され、妻が取得する財産額は結果的になかったものとして取り扱われるのです。そうすると、せっかく意思を持って遺贈や生前贈与をしたことが無効になります。そのため、今回の改正で婚姻期間が20年以上ある夫婦間で、配偶者に対し、居住の用にする不動産を遺贈または贈与した場合は原則、特別受益としなくてもよいとされたのです。

2.預貯金の仮払い制度(2019年7月1日施行)
残された相続人の生活資金として重要な預貯金に対しても制度改正が行われます。2016年12月の最高裁大法廷での決定で「相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれるから、共同相続人による単独での払い戻しができない」との判断が下されました。しかし、実態上、それでは急な支出などに対応できないため、遺産分割前でも仮払いできることとなりました。

具体的な計算式は、遺族に属する預貯金のうち、「口座ごとの金額×3分の1×払い戻しを行う法定相続人の取り分」までは単独での払い戻しが認められます。それを超える部分でも他の共同相続人の利益を害しない限り、家裁の判断で仮払いが認められるようになります。

自筆証書遺言についての改正

1.方式の緩和(2019年1月13日施行)
改正前、自筆証書遺言はすべて手書きで行う必要がありました。しかし、今回の改正で財産目録について各ページへ署名捺印すれば、パソコンなどで作成した目録や銀行通帳コピー、不動産登記事項証明書などを添付書類としてすることが可能となりました。

2.法務局による保管(2020年7月10日施行)
作成された自筆証書遺言は、今まで公的機関で保管する仕組みがありませんでした。今回の改正で法務局がそれを保管する制度が新設されます。

遺留分制度に関する改正(2019年7月1日施行)

「法定相続人に最低限これでだけは渡しなさい」と決められている比率を「遺留分」といいます。しかし、その分が侵害された場合、現行法では遺留分侵害の限度まで贈与または遺贈された物件の返還請求が可能です。これを遺留分減殺請求といいますが、この状態ですと返還された部分が共有状態となります。そこで、今回の改正では、遺留分減殺請求で生じる権利はその相当額の金銭債権になると改正されました。分けられるお金を使えることで、権利関係を複雑化させないことができるようになります。

相続人以外の寄与分が金銭で請求可能に(2019年7月1日施行)

子供の妻の立場で、介護などを献身的に行っても法定相続人ではないので、今までは財産分与の恩恵に預かることはできませんでした。しかし、父母の死亡前に子供の配偶者が亡くなっている場合、例えばその妻が献身的に介護を行ったにもかかわらず、無関心だった法定相続人しか相続を受けられないのは、不公平との考え方から、相続開始後に相続人に対して金銭の請求ができることとなりました。これを特別寄与料と呼びます。

以上、改正点をまとめました。すでに遺言をされている方も内容を見直す必要があるかもしれません。詳しくは専門家に相談することがおすすめです。

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