相続
2018.11.6

持ち家や店舗の相続で節税する 小規模宅地等の特例のメリットと注意点

(写真=Vadim Georgiev/Shutterstock.com)
(写真=Vadim Georgiev/Shutterstock.com)
人里離れた一軒家ならいざ知らず、ご自身や親族が持ち家や店舗をお持ちの方にとって相続税対策は悩みの種でしょう。

特に最近は基礎控除が縮小、相続税が強化され、課税のボーダーラインが大きく下がっています。

この記事では、節税対策としてよく知られている「小規模宅地等の特例」について、そのメリットと注意点を紹介します。

メリット-最大で8割の評価額減も

「小規模宅地等の特例」による節税メリットは非常に大きく、貸付事業(アパートや駐車場、駐輪場などの不動産賃貸事業を指します。)用の宅地でも5割の、居住者や事業用(貸付事業を除く)の宅地なら8割の評価減が認められます。

ちなみに限度面積は居住用で330㎡まで、事業(貸付事業を除く)用で400㎡までですので多少広い程度の住宅・店舗なら限度の中に入ります(貸付事業用は200㎡まで)

仮に兄弟2人が居住用宅地(300㎡)2.5億円(2億5,000万円)、その他の遺産0.1億円(1,000万円)を相続した場合の相続税の総額は以下の通りです。

●小規模宅地等の特例の適用が無い場合
A 課税価格:居住用宅地2億5,000万円+その他の遺産1,000万円=2億6,000万円
B 基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
C 課税遺産総額:A-B=2億1,800万円
D 法定相続分に応ずる取得金額:C÷2人=1億900万円
E 相続税の総額:(D×相続税率40%(0.4)-相続税控除額1,700万円)×2人=5,320万円

●小規模宅地等の特例の適用がある場合
F 課税価格:居住用宅地2億5,000万円×減額割合80%(1-0.8)+その他の遺産1,000万円=6,000万円
G 課税遺産総額:F-B=1,800万円
H 法定相続分に応ずる取得金額:G÷2人=900万円
I 相続税の総額:(H×相続税率10%(0.1))×2人=180万円

5,000万円以上の相続税の総額が、なんと200万以下にまで節税できるのです。

※相続税の計算方法・税率・基礎控除額・小規模宅地等の特例の詳細などについては以下の国税庁HPをご覧ください。
・相続税の計算方法
・相続税の税率・基礎控除額
・小規模宅地等の特例

特例の要件は厳しい-介護の問題を考える

住宅の場合、持ち主が亡くなられた時点で「居住の用に供していた」ことが条件になります。つまり「空家」の場合は、原則として適用が認められません。

では認知症などにより、施設に入居して亡くなられた場合はどうでしょうか?こうしたケースで特例の適用を受けることができる条件の一例を簡略化して説明すると、以下の①・②の条件を満たせば特例の適用を受けることができます。ただし、無条件に認められるわけではないので注意が必要です。

①介護保険法に定める要介護認定または要支援認定を受けていること。因みに要支援認定とは、椅子から立ち上がる際に他人の支えを必要とするレベルとされています。つまり、要支援認定より元気な状態で施設に入居した場合、特例の適用を受けることができません。

②老人福祉法などの法律の許可を受けた施設であること。無許可営業でない限り、ほとんどの施設はこの基準をクリアーしています。

2世帯住宅でも同居と認められるか

小規模宅地等の特例の適用を受けるための要件の一つとして、「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族」が「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」という要件があります。「被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族」とは、簡単に言うと被相続人と同居していた親族のことです。ここで、特に2世帯住宅を建てる場合は、この同居要件を満たすかどうかに注視しなければいけません。

平成25年の改正では、1階と2階が行き来出来ないような住宅でも、同居しているものと認められるようになりました。

ただし、それぞれの棟が完全に分離され、渡り廊下で行き来するいわゆる「離れタイプ」については、それぞれが別棟の建物として登記されており、かつそれぞれが別棟の建物と認定された場合は、同居とは認められません。

期限までに申告書を提出しなかったらどうする?

「小規模宅地等の特例」により相続財産の課税価格が基礎控除額以下になった場合、税務署への申告は不要でしょうか?

勘違いする方も多いのですが、「小規模宅地等の特例」を受けるには、相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算の明細書や遺産分割協議書などを添付しなければなりません。

ちなみに相続税申告書の提出期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。では、期限を過ぎてしまい後から気づいた場合はどうなるのでしょうか?安心してください、そんなケースでも、「期限後申告書」を税務署に提出すれば「小規模宅地等の特例」は認められます。ただし、この場合、申告書の提出期限までに遺産分割協議を行うことが必要であるなどの諸条件があるので注意が必要です。

節税対策以上のリスクとは

最後に、節税対策より気をつけなければならない点を紹介します。それは、「相続」ならぬ「争族」です。「同居していた母親が他界し持ち家を相続しようとしたところ、他の兄弟に反対され泣く泣く手放した」のような話は稀ではありません。

「兄弟同士仲が良いから大丈夫」などと、たかをくくってはいけません。「縁起が悪い」などと思わず、事前に親族同士で話し合うことが欠かせません。場合によっては、遺言を残す・相続相談サービスなどの方法を活用するのも選択肢の一つです。

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