相続
2018.8.24

相続税対策としての生前贈与の概要とは

(写真=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)
(写真=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)
2015年に相続税の大改正が行われ、税負担が大きく高まりました。このため、相続税対策が一層重要となりましたが、いったん相続が発生してからできることはあまり多くありません。生前に対策を立てておくことが大事であり、中でも生前贈与は有効な方法となります。生前贈与に利用できる制度としては、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」があります。

暦年課税を利用した生前贈与

1月1日からその年の12月31日の間に行われた贈与には、金額に応じて、10%から最大55%の税金が、贈与を受けた人に対してかかります。しかし、110万円までは基礎控除額として差し引かれるため、非課税となります。これを利用して、毎年110万円以内で贈与をしていけば、その分、相続財産を無税で減らすことができるのです。

当然、早く始めるほど多くの財産を移すことができ、効果が高まります。ただし、簡単に実行できる方法ですが、以下のような点には注意が必要です。

1. 贈与と認められないケース

贈与は、もらった人とあげた人の合意で成立します。このため、親が勝手に子供の銀行口座に振り込んでいるだけと税務署が判断すると、贈与と認められないこともあります。これを避けるためには、贈与契約書を毎年作成しておくことが有効です。

2. 連年贈与とみなされるケース

1,000万円を一人の子供に贈与したいと思ったものの、課税されないように、10年間かけて毎年100万円ずつ贈与したとします。この場合、連年贈与とみなされる可能性があるのです。この場合、1,000万円の贈与を分割しただけだとして、1,000万円に対して相続時に課税されることがあります。連年贈与とみなされないためには、毎年違う金額を、違う時期に贈与することが有効です。

3. 相続発生前3年以内の贈与はなかったことに

相続人が受け取った相続発生前3年以内の贈与は、相続財産の計算に足し戻されます。ただし、孫は法定相続人ではないので、3年以内の贈与でも足し戻す必要はありません(子供が死亡して孫が代襲相続人となっている場合や、遺言書で現金などを遺贈されている場合などは除きます)。子供の配偶者なども同様に、一定の要件のもとで、足し戻す必要はありません。

相続時精算課税制度

生前贈与で使えるもう一つの制度として、相続時精算課税制度があります。これは60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子、孫への贈与が対象となります。2,500万円までが非課税で、それを超える額には一律20%の贈与税が課税されます。贈与は一度に行う必要はなく、この制度の利用を開始してから相続発生までの間のすべての贈与が対象になります。

ただし、これは節税に直結する制度ではありません。相続発生時まで課税を一部に留め置くもので、言葉通り、相続発生時には「精算」されます。具体的に言うと、この制度を使って贈与した財産を、相続時に相続財産に加算して相続税を計算し、すでに払った贈与税を差し引いた額が徴収されるのです。

気を付けたいのは、この制度をいったん利用すると、もう暦年課税に戻ることはできないということです。贈与の総額が2,500万円を超えると、年間で110万円以下の贈与であっても、20%の税金がかかります。このため、長期にわたって暦年贈与ができる見込みがあり、すぐに大きな金額を贈与する必要がないのであれば、相続時精算課税制度の利用は慎重に判断したほうがよいかもしれません。

また、暦年贈与が誰から贈与されても総額110万円までが非課税であるのに対し、相続時精算課税制度は贈与する人を特定して贈与税を計算します。つまり、父親からは相続時精算課税制度で贈与を受け、母親などからの贈与は暦年課税とすることも可能なのです。

それぞれの制度の効果的な使い方

暦年贈与は、早く始めて、かつ贈与する相手が多いほど、相続税対策として効果が上がります。例えば、子供や孫など5人に、110万円ずつ(連年贈与とみなされないように工夫して)20年間贈与を行うと、1億1,000万円の相続財産を非課税で減らすことができます。

110万円を超えても、基礎控除後の金額が200万円までの贈与税率は10%です。相続税率がそれよりも高くなりそうであれば、贈与税を払って贈与額を増やすことも有効です。

相続時精算課税制度では、相続財産に足し戻すときの贈与財産の金額は、贈与時のものとなります。このため、贈与後にその財産が値上がりしたような場合は、税金上では有利になります。また、贈与したものが賃貸マンションなどで収益を生み出す場合も、その収益はもらった人のものとなり、相続財産には含まれません。

値上がりが見込まれるものや、収益を生むものについては、相続時精算課税制度の利用を検討する価値がありそうです。それぞれの制度の特徴を理解し、上手に使い分けることで、生前贈与もより効果が高まるでしょう。

北垣 愛
国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、1級ファイナンシャル・プランニング技能士として身近なお金の話も発信中。ブログでも情報発信中。

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