経営
2019.7.11

会社を買う 最低限のファイナンスの知識 その2

(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)
(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)
前回の「会社を買う 最低限のファイナンスの知識」では、中小企業大廃業時代の到来と、個人が小さな会社を買う時代がやってきていること、その時に大事なのはまず値付け、ということをお伝えしました。

今回は、会社購入時のキャッシュフローについて深掘りしていきます。

会社を買うことは不動産投資とほぼ同じ

不動産投資では、区分所有物件もしくは一棟物のマンションやアパートを購入し、そこからの家賃収入を得ます。さらに、出口戦略として物件を売却することでキャピタルゲインを得るか、もしくはキャピタルロスをできるだけ抑えて、それまでのインカムゲインがキャピタルロスを上回れば、投資としては成功です。

不動産投資では、一般的に金融機関からの借入を起こして物件を購入しますが、自己資金として入れる部分を純資産といいます。いわゆる頭金と言われる部分です。

投資では、投入した自己資金がどのくらい利益を生むかが重要ですが、この指標をROE(Return On Equity)と呼びます。

不動産投資において、毎月家賃を得て金融機関への返済が進んでいくと、純資産が増えて負債(借入金)が減っていきます。もし借入金の最終返済期限まで物件を持ち続けた場合、借入金が0になりますから、物件はすべて自己資金で賄っていることになります。

それ以降は、この物件から上がってくる家賃収入は、固定資産税などの諸経費を除いて全額がオーナーのものとなります。それをもとに2棟目、3棟目と買い進めることで投資規模を増やしていき、家賃収入を増やしていきます。

会社を購入することも、基本的には不動産投資で物件を買うこととまったく同じです。物件は目に見えるのでわかりやすいですが、会社は目に見えないのでイメージがつきにくいかもしれません。しかし、考え方はまったく同じなのです。

財務諸表とM&A

会社の価値を表すものとして重要なのが財務諸表ですが、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)(国際会計基準では包括利益計算書と呼びます)は特に重要です。前回、会社の購入価格は、一般的に純資産+営業損益の3~5年分だとお伝えしました。

ここで大切なのは、なぜ営業損益の3~5年分が純資産に上乗せされるのか、という点です。

財務諸表は、いつ時点のものでしょうか。それらはすべて過去の数値をもとに作られます。年間利益を計算するPLも、ある時点での財産状況を表すB/Sもすべて過去の数字でしかありません。つまり、そこには将来の可能性はまったく入っていないのです。それらの数字は、過去のある時点までの業績、もしくはある時点での財産状態でしかないのです。これが、財務会計の限界なのです。

会社の株価を予想する際、PER(Price Earnings Ratio)という指標を使うことがあります。これは株価を一株あたりの予想純利益で割ったものです。また、PBR(Price Book-value Ratio)という指標もあります。こちらは、株価を一株あたり純資産で割ったものです。

PERの計算に使うのは、「予想純利益」と書きました。財務諸表は過去の数値なので、矛盾が生じます。しかし、それでいいのです。PERを計算する際に主に予想純利益を使うのは、将来会社がどの程度儲けるかを織り込んでいるからなのです。

日本の一部上場企業の予想PERは、約15倍と言われています。これは、現在の一株あたりの当期純利益が今後15年続く可能性があるので、その分まで株価に織り込んでいるということを意味します。

もう一つの指標であるPBRは株価を一株あたりの純資産で割った指標ですが、これが1倍以下の銘柄が市場には多く存在します。特に最近は、多くの地方銀行のPBRが1倍を割り込んでいます。

PBRが1倍以下ということは、現在の純資産、すなわち創業以来蓄積してきた会社の価値よりも株価のほうが低いということです。ということは、株主としては会社を解散してもらい、負債などを精算した残りをもらったほうが投資金額より多いという状態なのです。

会社の購入金額の話に戻ります。純資産+営業利益3~5年分が会社の購入金額だと書きましたが、この3~5年に当たる部分は、いわゆる「のれん代」です。これは財産状態を表すB/Sのどこにも載っておらず、将来も稼ぐというのはあくまで予想でしかありません。純資産に上乗せして「のれん代」を払うということは、現在の営業利益をあと3~5年は稼ぐことを前提とした金額なのです。

キャッシュフローの大切さ

会社が倒産する原因で多いのは、資金繰りに行き詰まること(資金ショート)です。具体的には、仕入代金や従業員の給与、運転資金、手形決済、銀行への借入金返済ができなくなると倒産してしまいます。このように、現金が底をついた時点で会社は倒産するのです。「Cash is king.」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。これは、特にスタートアップ企業が肝に銘じるべきことです。

良い商品を生産する技術力があったとしても、それを軌道に乗せる手前で資金が枯渇してしまえばアウトなのです。

したがって、会社を買う場合はその会社に売掛金が多くないかどうか、とても重要なチェックポイントの一つとなります。それが現金化できなければ、キャッシュが底についてしまう可能性があるからです。

よって買収先の資金繰りの状況は、何にもまして慎重に精査する必要があるのです。

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