経営
2019.5.9

ホワイトハウス・議会を動かすロビイストは金持ち優遇節税スキームも思いのまま

(写真= Orhan Cam/Shutterstock.com)
(写真= Orhan Cam/Shutterstock.com)
日本の国税当局は、海外への資産フライトに対する課税を強化したり、最近でも経営者保険を販売見直しに追い込んだりと、富裕層の節税スキームに対して厳しい姿勢をとっているように見えます。

では、アメリカはどうなのでしょうか。今回の記事では、富裕層に甘いアメリカの税制と政府・議会に圧力をかけるロビイスト団体のパワーを紹介します。

アメリカではロビイストが政策を決める

ニューヨークのマンハッタン島南端を通るウォール街はニューヨーク証券取引所(NYSE)・FRB(連邦準備銀行)・投資銀行が軒を連ねています。(現在では投資銀行の多くが本社機能をニュージャージー・ミッドタウン等に移転させていますが)。

ロンドンのシティと並ぶこの金融街(フィナンシャル・ディストリクト)は日本人にも有名で、NYSEの重厚な建物やフェデラルホールの前では観光客が記念撮影を楽しんでいます。

一方、ワシントンのKストリートはどうでしょうか。

人工的に作られた街DCは、京都のように碁盤の目に整備され、東西を貫く通りにはアルファベット、南北を貫く通りには数字が付されています。

この他、キャピトルヒル(連邦議事堂)から伸びる放射上道路には州名が付されます。特に有名なのが各国の大使館が立ち並ぶマサチューセッツ通りや、キャピトルヒルとホワイトハウス(大統領府)を結ぶペンシルベニア通りは有名です。

キャピトルヒル・ホワイトハウス(大統領府)と並んで、Kストリートは政治の街DCを象徴する存在とされています。

DCのオフィス中心街を東西に抜けるKストリートとその周辺には、シンクタンクや法律事務所をはじめとした多くのロビイスト団体が事務所を構え、民主・共和両党や大統領首席補佐官を筆頭とする政権中枢(ホワイトハウス・ウエストウイング)に陳情・働きかけさらには積極的な政策を提言しようというロビイストたちが集まります。
同時にKストリートは人材の供給機能を有しており、連邦議員OBや官僚経験者が籍を置く一方で、将来の政権中枢を目指すロビイストも少なくありません。

こうしてロビイストは、アメリカ、ひいては世界の政治的判断を大きく左右しているのです。

政権・議会を陰で動かす「繁栄のためのアメリカ人」

そんなロビイスト団体の中でも、「繁栄のためのアメリカ人(AFP)」は、富裕層・超富裕層への減税策実現のため、政権・議会を陰で動かす存在とされています。

AFPを主催するのはコーク兄弟(チャールズ・デイビッド)、「フォーチューン」富豪ランキングの常連で、2人合わせた総資産額は100億ドルを超え、ビル・ゲイツすら上回ります。

AFPはティーパーティーの流れを汲み、リバタリアン(国家による徴税や統制・社会福祉を目の敵にする市場絶対主義思想)を広める活動に邁進しています。同時に民主党を中心としたリベラルを敵とみなし、共和党の中でも超保守的なグループを支援しています。

アメリカのスーパーリッチはリバタリアンの熱狂的信者も多く、コーク兄弟はAFPを通じて富豪たちを組織化し、資金を吸い上げます。そして巨額の資金を武器にシンクタンク・学術団体などにつぎ込み、たこ足のようにアメリカ社会の隅々に自称「草の根運動」を作り上げ、政治的な圧力をかけ続けました。

AFPの目論見は奏功、共和党の主流派層にもAFPの影響力がすっかり浸透し、「もはや共和党はコーク中毒(コーク兄弟とコカイン中毒になぞらえた皮肉)だ」との声すら聞こえてきます。

そりの合わなかったトランプ政権との関係修復も進み、2018年の税制改正では法人税率・所得税律の引き下げや遺産税廃止といった富裕層に有利な改定が織り込まれ、AFPは全面的にこの改正を称賛しました。

一方で、「自ら富を築いたわけでなく親から受け継いだ資産の維持に執心する」彼らの姿勢には批判の声があるのも確かです。来年の大統領選挙に向けてトランプ氏も民主党候補も動き出しており、今後のAFPの動向からは目が離せません。
 

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