経営
2019.4.26

中小企業の事業承継に欠かせない新事業承継税制とは

(写真= El Nariz/Shutterstock.com)
(写真= El Nariz/Shutterstock.com)
中小企業のように上場していない株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制について、従来の一般措置に加え、要件が大幅に緩和された特例措置が作られました。

この制度は一言でいえば、「子供や孫など親族に事業を譲るのであれば、相続税、贈与税を最大100%免除します」というとてもありがたいものです。免除と書きましたが、実際は贈与税、相続税を繰り越せるイメージです。

従来の一般措置は使い勝手が悪く、制度ができて8年間で全国でわずか2,000件弱しか使われていません。新しい制度がつくられた背景には、今後差し迫る中小企業の大廃業時代をどうにかしなくては、という政府の危機感があります。

以下で、この制度のあらましを解説します。

新事業承継税制の概要

(1)生前贈与時

非上場の株式を子供に生前譲渡する場合、贈与税がかかります。しかし新事業承継税制を使うことで、まず贈与税が猶予され、被相続人が亡くなった時、もしくは後継者が新制度を使ってさらに子供に贈与した場合は100%免除されます。

(2)相続時

先代経営者が亡くなった場合、通常は自社株評価額で相続税を納める必要がありますが、こちらも先代が亡くなった段階で相続税が100%免除されます。

新事業承継税制4つのポイント

(1)先代経営者以外の複数の株主からの株式贈与も対象

多くの中小企業は、先代だけが株式を持っていることは少なく、配偶者や兄弟姉妹も保有しているケースが多いです。先代の配偶者や事業を行っていない兄弟姉妹、また第三者からの株式についても無税で贈与できるようになりました。

(2)複数の新株主への贈与もOK

贈与を受ける側も、3人までは贈与を受けても無税となります。ただし、新株主は代表権を有しているもの、さらにトータルで10%以上の議決権を有し、かつ議決権保有割合上位3位までの同族関係者に限ります。

(3)本制度の適用をやめる場合の税金

もし納税猶予期間内に売却、解散した場合はどうなるのでしょうか。この場合、贈与時・相続時の株価ではなく、売却時などの時点での株価で再計算し、承継時との差額があれば、その分は免除されます。

(4)届け出の煩雑さ

この制度を利用するためには、都道府県知事への申請と税務署への申告が必須です。なお、この制度は2018年4月から2027年3月までの間に贈与(または相続)が発生した場合に適用される特別措置です。

さらに、この適用を受けるためには、2018年4月から2023年5月までの5年間に特例承認計画を策定し、都道府県知事に提出するが必要があります。

適用要件は3つ

(1)会社の要件

①中小企業のみで、上場企業、風俗営業会社、資産管理会社(従業員数5名以上は可)は申請不可。従って不動産管理会社は適用が難しい。
②従業員が1人以上必要。

(2)先代経営者の要件

①同族で発行済株式の過半数を有していること。
②同族会社の筆頭株主であること。
③贈与時点で代表から外れていること。

(3)後継者の要件

①株を引き継ぐグループで発行済株式の議決権を有すること。
②同族グループで上位3位までを占めること。
③会社の代表者であること。
④相続税の猶予を受ける場合、相続前に役員であること。

5つの注意点

(1)担保の提供

申告期限までに、納税猶予相当額の担保を入れる必要があります。担保には、対象となる非上場株式そのものや他の有価証券、不動産などが使えます。

(2)5年間の事業継続が必要

5年間は、後継者が社長でいる必要があります。途中で退任する場合は手続きが必要です。5年目以降は退任できますが、株式は持ち続ける必要があります。

(3)贈与の場合の注意点

生前贈与でこの制度を使い、その後に先代が亡くなった場合、先代の相続財産に生前贈与した株の評価額がプラスされます。自社株部分の相続税は、条件次第で再度この新事業承継制度を使ってその後も納税猶予することができますが、相続財産の評価額が想像以上に増え、相続税額が増える可能性があるので注意が必要です。

(4)書類を5年間提出し続ける必要あり

申告後5年間、毎年都道府県へ「年次報告書」、税務署へ「継続届出書」を提出する必要があります。それ以降も、3年に1回税務署へ「継続届出書」を提出しなければならず、負担は継続します。

(5)この制度が本当に有効か専門家のコンサルが必要

この制度は、「租税特別措置法」と「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の2つにまたがっています。特に租税特別措置法の該当条文は、関連法令を含めるとかなりのボリュームで、かつ難解です。また、相続時精算課税制度の併用もできるため、慎重に検討すべき項目もあります。

新しい制度ゆえ、この税制に慣れた専門家は非常に少ないと思われます。したがって、提出前に制度に精通した税理士とともにしっかり準備をしてから届け出することを強くお勧めします。

事業承継に限らず、相続関連のことを親に切り出すのは、なかなか難しいと思います。しかし、この新事業承継制度は5年間の猶予しかないので、思い切って先代に話をしてみてはいかがでしょうか。さらに、先代が認知症になる前に家族信託などと組み合わせて準備しておけば、より万全な対策となるでしょう。
 

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