経営
2019.1.28

中小企業の法人保険活用方法(シリーズ)内部留保と株式評価

(写真=kan_chana/Shutterstock.com)
(写真=kan_chana/Shutterstock.com)
事業承継を行う上で、多くの経営者の方々が頭を悩ます問題の一つが自社株評価の問題です。事業が順調に進み、内部留保が貯まってくると、自社株の評価も上がってきます。そのまま次世代に事業承継を行っていくと、相続する場面で多額の相続税を支払うことになりかねません。それを避けるために様々な方法があります。

今回から数回にわたり、事業承継の基礎的な考え方と「個人と法人のバランスをどのようにとっていくべきか」について考察していきます。会社の経営を表す財務諸表は、決算期日での財産の状況を表す貸借対照表と1年間の経営によっていくら儲かったのかを表す損益計算書があることは、経営者の方なら知っておかなければなりません。

経営者の方が興味を持たれるのは、後者の損益計算書の方にどうしても目が行きがちだと思います。しかし、自社株の評価を見る場合は貸借対照表の純資産の部を見ていくことが必要です。その理由は、事業を始めてから、会社が積み上げてきた利益がわかるからにほかなりません。自社株評価を行う場合に、資本金や資本準備金などの他に、繰越利益剰余金を見ていくこととなります。

これを法人税法上、内部留保といいます。特に配当などで外部にお金が出ていかなければ、その金額が内部留保金となるわけです。これは、法人税申告書の別表5で見ることができます。そこで必要なのが、「上場をしていない会社の株式はどのように評価していくか」ということです。まず、その流れを見ていきましょう。

未上場自社株評価の流れ

上場していない会社の株式評価は、顧問契約している税理士と連携しながら行うことが多いと思います。その評価の結果が、経営者が想定していた場合より大きかった場合、スピード感を持って自社株対策に取り組んでいくことが必要です。では、自社株評価の流れを見ていきましょう。

1.株式取得者の区分
「同族株式等か」「それ以外か」を区分しましょう。大体の中小企業の場合、同族株式と判定されると思います。この判定は、法人税申告書の別表2で行います。

2.会社規模の判定
大会社、中会社、小会社の判定を行います。

3.特定会社か否かの判定
資本金1億円以下の会社は特定同族会社と判定されます。資本政策は、さまざまな要因を考える必要がありますが、資本金はなるべく少額かつ、資本準備金を厚くすることで純資産の部を充実させることが可能です。

4.評価方法の決定
3で特定同族会社とみなされない場合、原則的評価方法をとることができます。原則的評価方法とは下記の3方式を選択可能です。

a 類似業種比準方式
b 純資産価格方式
c 上記2方式の併用

また、1で同族株式等以外の会社と判定された場合、配当還元方式をとることとなります。

法人と個人資産の配分

次に、資産を「法人で所有するか」「個人で所有するか」について考えてみましょう。

1.法人に資産が多い場合
法人に多く資産を持つケースでは、「法人にお金がないと漠然と不安だ」「個人としてお金を持っていてもそれほど使い道が見つからない」という声もあります。そして、究極なのは、「法人のお金は結局自分のお金なので、多ければ多いほど良い」などと考えることが多い傾向です。

2.個人に資産が多い場合
法人は、新規事業を行ったり、借り入れしたりする場合などがあります。会社形態のため、重要な意思決定をする際は、株主総会もしくは取締役会の決議事項となるなどが面倒だと考え、個人に資産を移転するケースが多い傾向です。しかし、最近ではコーポレートガバナンスが求められる場面が増え、個人と会社の経営をきちんと切り離し、組織として企業統治を行うことが要求されます。

他の取締役などの反対があれば、思い通りの事業展開ができなくなることもあるのです。ただ、個人のお金を出資するといった観点では、まったく問題ありません。個人の資産が潤沢であればあるほど、使えるお金は多くなります。自分の子どもや孫に事業承継をする上で考えるべきことは、以下の4つです。

・株式の移動
・ビジネスオーナーである先代以外から後継者への株式の移動
・自社株評価の引き下げ
・納税資金の準備

次回のコラムでは、それぞれの具体的対策を見ていきます。

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