資産運用
2019.7.11

日本人の金融リテラシーは低いか

(画像=designer491/Shutterstock.com)
(画像=designer491/Shutterstock.com)
金融庁ワーキンググループが発表した「老後2,000万円不足する」という内容の報告書は、様々なところで波紋を呼んでいます。

私はFPとして100人以上のご家庭のライフプランを作成してきましたが、本当にご家庭の数だけライフプランがあるということを強く感じます。実際、「平均寿命まで生きた場合、このままでは立ちいかなくなるだろう」と思うご家庭もあれば、金銭的に余裕があり、そのお金をどう使おうかと悩んでいるご家庭もありました。

都会に住んでいる人たちの住居は賃貸の割合が高いですが、そのままでは老後も住居費がかかります。老後もそのまま賃料の高い都会に住み続けることは難しく、「老後資金が2,000万円足りない」どころの話ではありません。

2,000万円という数字が独り歩きして、「そのお金がなければ老後生活が破綻する」といった論調でマスコミは伝えています。私は、日本人はもっとお金のことを勉強して、少しでも自分に得するように動く必要があると思うのです。

お金に関する知識は、知っているかどうか、ただそれだけです。知らなければ自分が損しますし、知るために勉強して知識を吸収すれば、得をします。今は、情報をいくらでも得ることができる時代です。それを活用するかしないかは考え方と、やる気があるかどうかだけでしょう。

今回は、日本人の金融リテラシー(知識)は諸外国と比べてどうか、関連資料から考えていきます。

先進国における資産配分の国際比較

このグラフは、日本、米国、欧州の家計貯蓄の金額とその運用先を表したものです。
 
出所:日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」2018年8月14日
リスク性資産を債務証券(国債・社債等)、投資信託、株式等と定義すると、全金融資産に占めるリスク性資産の割合は、日本16.2%、米国53.9%、欧州31.3%と大きく異なります。日本の金融資産のうち、52.5%は預貯金です。普通預金で0.001%、定期預金でも0.01%しか利息がつかないことを考えると、増えることはまったく期待しないで、貸し金庫に預ける感覚で銀行に預けているのでしょう。ということは、日本の個人金融資産のうち約960兆円が、ほぼ無利息のまま放置されているということです。改めて考えると恐ろしい状況なのです。

なぜ日本人の金融資産にはリスク性資産が少ないのか

なぜ日本人はリスク性資産を持ちたがらないのでしょうか。以前から政府は「貯蓄から投資へ」と呼びかけていますが、未だに預貯金はリスク資産へシフトしていません。

その理由として考えられるのは、以下の通りです。

「家計の財産に余裕がないから、少額を毎月リスク性資産に投資してもトータルではほとんど変わらない」

「投資経験が少ないから、やってみて損をするのが嫌だ」

「金融リテラシー(知識)がないし、難しいことを覚えるのは面倒だ」

「金融商品を売る側は、どうにかして儲からない金融商品を売りつけようとしているに違いない」

「そもそも投資に関心がない」

これらに加えて、行動ファイナンス上の近視眼的な投資行動による損失を被ることへの恐怖もあるでしょう。
 
出所:金融庁「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート」2016年2月より
このグラフから読み取れるのは、そもそも投資に関して関心がない人が圧倒的に多いということです。これはある意味深刻な状況ですが、この層を投資に向かわせるのは至難の技と言えるでしょう。

しかしそれは、冒頭の「老後2,000万円足りない」という問題をどのように解決していくかを考えることを放棄していることになります。

日本人の金融リテラシーは低いのか?

では、本題の「日本人の金融リテラシーは低いのか?」について見ていきましょう。

以下は、日銀の金融広報中央委員会(知るぽると)が行った「金融リテラシー調査2016年」におけるクイズの一部です。

皆さんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 
正解は、以下の通りです。

問1:4
問2:2
問3:3
問4:2
問5:3

次に、米国との共通問題の質問と正答率です。
 
  問題 日本の正答率 米国の正答率
1 100万円を年利2%の利息がつく貯金口座に預けたら、5年後には残高はいくらになるか 43% 75%
2 インフレ率が2%で、普通預金口座で受け取る利息が1%なら、1年後にこの口座でどれくらいの物を購入できるか 56% 61%
3 住宅ローンで返済期間15年の場合と30年の場合を比べると、15年の方が月々の支払いは多いが支払う利息の総額は少ない 68% 75%
4 1社の株を買うことは、通常、株式投資信託を買うよりも安全な投資である 46% 48%
5 金利が上がったら、通常、債券価格はどうなるか 24% 28%
  5問全体平均正答率 47% 57%

出所:米国金融業界の自主規制機関(Financial Industry Regulatory Authority、FINRA)が2012 年に調査(Financial Capability in the United States)を実施。2013年5月に調査結果を公表。調査方法は、インターネット調査。

全体正答率、問題ごとの正答率ともに日本が米国を下回っています。しかも日本の全体正答率は、50%以下でした。

まとめ

ここまで、様々なレポートから「日本人の金融リテラシーは低いか?」という問題に迫ってみました。

そこから読み取れることは、「金融リテラシーが低いから投資しない」「金融リテラシーが高いから投資する」ではなく、「投資経験がなく、お金に対する関心がないからリテラシーが低い」「投資経験があり、必要に迫られて知識を習得するので、その結果リテラシーが高くなる」ということです。

まずは投資経験を積むことから始め(例えばポイント投資など、リアルなお金ではなく、ポイントを使った投資など)、それをきっかけに金融知識に目覚め、必要に応じて知識を得てリテラシーが上がる、といった好循環にシフトしなければ、日本の年金問題はますます深刻になるのではないでしょうか。

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